歌舞伎を観る前に、予習は必要?
歌舞伎に予習が必要か?と聞かれた時、私は必ずこう言います。
「歌舞伎もエンタメ。ドキドキ、ワクワクにお勉強は要りません」
あ! 信用してないでしょう。
それに、「初めてだから不安」という気持ちはわかります。
ではあなたにとって、どんな「予習」が最適なのでしょうか?
あなたは「鬼滅の刃」を観る前に、予習しました? 「シン・エヴァンゲリオン」は?
歌舞伎に限らず、「予習してから観るタイプ」と「事前情報を一切入れないで行くタイプ」に分かれます。
タイプ別に、「歌舞伎に行く前の予習が必要かどうか」をお話ししますね。
タイプ別予習復習のしかた教えます。あなたはどのタイプ?
A)映画を観る前にこれまでのアニメや原作をすべて見たり読んだりした上で観た。
B)映画になる前に、アニメを観ていた。すでに漫画全巻を持っている。
C)基礎知識は何も持たずに見たけど面白かった。
D)一度観て、後からマンガを全巻読んでわからないところが理解できた。
(Aタイプ)映画に行く前にも筋を全部知っていたい人は、予習が必要
このタイプの人は、「歌舞伎だから」予習が必要なのではなく、どんなジャンルのエンタメであっても、「すべてをわかっていないと安心して見られない」ので、あらすじや登場人物などについて、ググってからいらっしゃるのがいいと思います。
国立劇場歌舞伎情報サイトは内容が充実していますので、「観てから」調べる時に活用してみてください。
(Bタイプ)一つの作品にのめり込むタイプの人は、歌舞伎にハマる素質あり!
歌舞伎の作品は、歴史とか過去の有名な作品に基づいたものがたくさんあります。歌舞伎を観たことがなくても、
「あれ? この話、私知ってるかも!」と感じるかも知れません。
例えば、歴史好きな人であれば、明智光秀が主人公の歌舞伎や、源平合戦の話などは、すぐに理解できると思います。
歌舞伎をよくご覧になる方々が「何でも知っている」人に見えるとしたら、それはあなたが「元のマンガやアニメを見ている」のを同じように「その作品が好き」で「前に何度も見たことがある」からで、特別の勉強をしたわけではないんです。あなたは、これまで好きになったアニメや漫画と同じような気持ちで、歌舞伎を観ていただいたら嬉しいです。
(Cタイプ)「ネタバレ」が嫌いな人は、予習してはいけません。
ミステリー小説のあらすじを予習して、トリックや犯人までわかってしまったら、面白さが半減しますよね。歌舞伎には、「実は○○だった」というストーリーが多く、「え?そうだったの?」という驚きが随所にあります。私も舞台を見ながら「えーーーっ??」と、声を出してびっくりしてしまったことがあるくらいです。歌舞伎は同じ演目を何度も上演するので、「2回目」以降は当然「全部知って見る」こととなります。初めて観たときわからなかったこと、見逃してしまった重要なシーンがあったら、ぜひもう一度いらしてください。全部わかったつもりでいても、新しい発見がいくつもできる奥深さが古典の良さです。
でも「初めて」は一度だけ。だからこそ、初めて見る時の新鮮さを大切にしてほしい、というのが私の考えです。
(Dタイプ)最初は「よくわからない、でも、すごい!」でOK!
全てを理解できなくても、好きになることってありますよね。
アートとは、感じるもの。現代アートなんて、説明を聞いてもわからないことあるし。予習したから好きになる、というものでもありません。ピカソの絵も、最初は違和感があったはずなのに、それでも目が離せず、そしてクセになっていつしか大好きになったり、シャガールも、ファンタジックな幸せな世界だと思っていたら、説明を聞くと逆に「そんな苦しみから生まれた絵なんだ!」とびっくりしたり。
マイケル・ジャクソンの歌が好きな人も、最初から歌詞を全部理解していたでしょうか? 私は音楽とダンスに虜になって、歌詞の意味なんかわからなくても楽しんだ方です。
歌舞伎もそれと同じです。
Don’t think, but feel !
まずは感じましょう。それがアート! とにかく一度見て、衣裳でも音楽でも舞台転換でも、俳優の目力でも声の大きさでも、「すごい!」と思ったら、素晴らしい観劇体験です。自分の感性を信じましょう。
調べるのは「もっとわかりたい!」と思ってからでも遅くない
一回観て「あそこがわからなかった」「もっとわかりたい!」と思ったら、そこからいろいろ調べてください。「知りたい!」と思ったら、それはすでに「しなくてはならないお勉強」ではなくて好きなものをもっと好きになるための「アソビ」になるはず。
古典のいいところは、「次」があることです。また同じ演目に出会えます。「ハムレット」や「ロミオとジュリエット」と同じく、何度も見ることが可能です。2回目を見る時までに、いろいろ理解が進んでいると、きっと新たな発見があることでしょう。
国立劇場歌舞伎情報サイトは内容が充実していますので、「観てから」調べる時に活用してみてください。
とはいえ、最低限知っておくといい「予習」はある
それでも「これだけは知っておくといい」ことは、たしかにあります。時代設定、キャラ設定、くらいは知っておくと、物語に入りやすいのは確か。
歌舞伎美人(かぶきびと)には公演について、配役やあらすじ、主演俳優のインタビューなどが掲載されているので、一度訪問してみてください。
私が観劇ガイドをするときは、最初に20分くらいお話しさせていただくことがあります。30分以上お話しすると、観劇する前にエネルギーを使い果たしてしまうので、できるだけ短くお話しします。
一番大切なのは、
・時代設定(平安時代、鎌倉時代、江戸時代など)と、
・最初の場面の説明だと思っています。
他に作品によって、
・これは悲劇なのか、喜劇なのか。(気持ちの準備)
・時代的に、いつ頃の話か。
・ベースになっている実話や物語があるか。(大まかな史実や、出てくる有名人など)
・キーマンは誰か(登場人物の中で押さえておくべきキャラクターとそれを演じる俳優)
などもお伝えします。
誰の動きに注目するか、私は丁寧に説明するようにします。そうすれば、自然と物語に入っていけるものです。
あとは、流れにまかせて楽しめる、と私は確信しています。
解説お助けアイテム
・イヤホンガイド
当日劇場でイヤホンガイドを借りられます。(有料)同時通訳的なガイドで、すべてを知りたい人にはお勧めです。
ただ、たまに結末を先に言ってしまうことがあるので、ネタバレされたくない人にはお勧めしません。また、耳が1つ塞がれてしまうので、生の音楽を楽しみたい人にも向いていません。
・筋書(すじがき=プログラム)
少し早めに劇場に行って購入し、座席であらすじや配役のページを読んでおくというやり方もあります。(有料)
公演の後半になると、舞台写真が入ったものが売り出されます。
・YouTube「きっと歌舞伎が好きになる!」
2021年1月より、YouTubeにて「きっと歌舞伎が好きになる!」を毎週火曜日16時から配信しています。
できるだけ初日に行って見てきた感想などを話しているので、こちらも参考にしてみてください。
・1人で行くのは不安、という場合は…
私がアテンドします。リアルにアテンドすることもできますが、他に
「今月行くけど、その前に見どころをおしえて」という場合、1時間程度
「今から行くので、とりあえず30分くらい」という場合もご連絡ください。
公式LINE登録 https://lin.ee/6hlAyxe
BASE「仲野堂」で講座申し込み 【リモート】観劇前の、見どころカンどころ紹介
「歌舞伎を観てみたい人のためのビギナーズガイド」
すぐに役立つ「歌舞伎を観てみたい人のためのビギナーズガイド」(kindle)はこちらから!
目次
Q1 歌舞伎は観る前に予習が必要ですか?
Q2 歌舞伎は着物で観にいくもの?
Q3 歌舞伎のチケットは、どこで買えますか?
Q4 歌舞伎のチケット、高くないですか?
Q5 なぜ、チケットの値段に差があるの?
Q6 「とちり」の席ってどんな席?
Q7 「東西の席」ってどこですか?
Q8 なぜ歌舞伎役者はオーバーアクションなの?
Q9 黒装束で役者をヘルプする人は「くろご」?「くろこ」?
Q10 「女形」と「女方」どっちが正しい?
Q11 なぜ女性は歌舞伎をやれないの
コメント