ビギナー向け歌舞伎Q&A

Q.14 歌舞伎役者の家に生まれないと、歌舞伎はできないの?

歌舞伎は世襲制が残っている職業の1つですね。そこで、

本日のギモン:歌舞伎役者の家に生まれないと、歌舞伎はできないの?

歌舞伎役者の家に生まれたら歌舞伎役者になるしかない、そして、歌舞伎役者の家に生まれなければ歌舞伎はできない。そう思っている方多いかもしれません。
歌舞伎の世界を「梨園」などといって、特別だと感じる人達も多いです。

芸能や学問、芸道の世界には「一子相伝」といって、自分の芸は自分の子ども、それもただ一人の子どもに奥義を伝える、いわゆる「秘伝」扱いで芸を伝えるという風習があります。
けれどもその一方で、能の権威である世阿弥は「風姿花伝」の別紙口伝の中で、「たとへ一子なりといふども、不器量の者には伝ふべからず。家、家にあらず。継ぐを以て家とす」といています。どういうことかというと、たとえ実子であっても、奥義を伝えるのにふさわしい人物かどうかは見極めるべきであり、血がつながっていれば誰でもいいというわけではない、ということです。

本日のお答え:必ずしも「血縁」だけで決まりはしない

これは歌舞伎の世界も同じで、必ずしも初代からずっと血がつながってきたわけではありません。もちろん、息子や兄弟、そして孫に継がせようとしてはいますが、実子にふさわしい人が見つからなかった場合は、優秀な役者である弟子を娘婿に迎えたり、あるいは養子にしたりして、名前を継がせています。
それは芸の家だけではなく、商家も、武士の家も、すべてそうだったと思います。とりわけ、長子相続が原則だった江戸時代は、次男や三男は行き場がありませんので、優秀な人は婿養子あるいは養子という形で自分の居場所をつくり、花を咲かせていったのだと思います。養子を迎える方も、「血」よりも「実力」を重んじたでしょう。それが世阿弥の
「家、家にあらず。継ぐを以て家とす」という言葉に現れていると思います。

ただ、兄弟がたくさんいた昔とちがって少子化が進む現代、歌舞伎の家に生まれた方には、昔に比べて「自分がならなければ」あるいは「この子に継がせなければ」というプレッシャーは、かえって強くなっているかもしれませんね。
とはいえ、たとえば、人間国宝の坂東玉三郎さんは、歌舞伎の家の出ではありません。守田勘彌さんという名優がその才能に惚れ、まず芸養子にし、さらに本当の養子として迎えました。
片岡愛之助さんも、一般家庭の出身ですし、最近では、中村梅丸くんが、中村梅玉さんの芸養子となり、名前を中村莟玉(かんぎょく)と改めました。

また、国立劇場は研修所を開いています。いきなり役者さんのお弟子さんになるだけでなく、歌舞伎の研修生として基礎を学ぶこともできます。

本日のまとめ:

1.歌舞伎の家に生まれなくても、歌舞伎はできる
2.「血」も大切だが、「芸の力」は昔から大切だった
3.優秀なお弟子さんを婿養子・養子・あるいは芸養子にして家や名前を継がせることがある
4.歌舞伎の家に生まれなくても、国立劇場の研修所で歌舞伎の基礎が学べる

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